第3回地球観測サミット(ブリュッセル、2005年2月)にて「複数システムからなる全球地球観測システム(GEOSS)」構築の10年実施計画が合意され、2006年ワークプランに従って実行に移されています。また、2007-2009年ワークプランが各国政府の意見を踏まえて、第3回GEO総会(2006年11月28-29日、ボン)にて採択されました。わが国では第42回総合科学技術会議(2004年12月)にて採択された「地球観測の推進戦略」に沿って、文部科学省科学技術・学術審議会のもとに地球観測推進部会が設置され、国内の地球観測活動の方向性と具体事項の連携について議論し、施策に反映しているところです。
 健全な意思決定の基礎となる地球情報の提供と利用に向けたこのような国内外で取組みの中で、水は「GEOSS」の9つの公共的社会利益分野の一つとして、さらに「地球観測の推進戦略」では喫緊に取り組むべき5つの課題の2つ(「水循環の把握と水管理」、「風水害被害の軽減」)として位置づけられております。また、「地球観測の推進戦略」ではアジア各国との連携が重視されています。
 以上の趣旨を踏まえ、2005年11月2-4日に、18カ国、130名の参加を得て、第1回アジア水循環シンポジウムが東京にて開催されました。第1回シンポジウムでは、アジア域の各国の水問題とそれらに対する取り組みを紹介するとともに、現在進行中あるいは企画中の国際的取り組みを紹介した上で、水循環変動のメカニズムの理解を深め、変動の予測能力を高め、各国の多様な水環境に有効に適用する情報へと変換し、水災害軽減、水資源の有効利用に用いることを目的として、観測の統合化、データの相互運用性、データマネジメントについて話し合い、アジア各国が協力して、「GEOSSの貢献するアジア水循環イニシャチブ」を設立することに合意しました。さらに、本合意を実行に移すために各国代表からなるタスクチームを組織しました。  タスクチームでは電話会議、メールでの連絡、アンケートなどの準備作業を踏まえて、2006年9月26日にバンコクにてタスクチーム会合を開催し、12カ国から19名の参加を得て、デモンストレーションプロジェクトならびにデータポリシーについて議論しました。その結果、アジア各国の連携の下、アジアにおける水問題を共有しつつ、GEOSSのデータを効果的に利用して各国の水問題の解決を図るために、具体的な対象流域を各国に設定して、デモンストレーションプロジェクトを策定することにしました。対象となる流域の基準、データポリシーについて、基本的合意に達し、候補となる流域と解決すべき問題点を挙げて、実施計画の成文化作業を進めております。また同時期に開催されたGEOならびに統合地球観測戦略(IGOS)地球水循環観測イニシャチブ主催のアジア水資源管理のための能力開発会議との連携を深め、アジア域における水循環の観測と具体的施策への反映、そのための能力開発の具体的方向性を明らかにしました。
 そこで、GEOとわが国の関連機関が協力して、

  • 様々な地球観測データ、モデルを組み合わせて、水分野の意思決定に反映できるアジア域でのデモンストレーションプロジェクト実施計画の提案、採択と連携実施体制の確立
  • データポリシーの合意を目的として、第2回アジア水循環シンポジウムを開催することにいたしました。

 本シンポジウムに続いて、GEO主催の「アジア−太平洋地域における持続可能な開発のための統合観測に関するGEOSSシンポジウム(GEOSS Symposium on Integrated Observation for Sustainable Development in the Asia-Pacific Region (GEOSS AP Symposium))」が11-12日に都内で開催されます。GEOSS AP シンポジウムでは気候変動・水循環が生態系、災害とともに主要テーマとして取り上げられます。そこで、第2回アジア水循環シンポジウムの成果をGEOSS AP シンポジウムで報告するとともに、統合的観測の実現と流域管理への効果的な統合観測データの利用を推進するための能力開発を主たるテーマとして議論することとします。
 また、世界気候研究計画(WCRP)全球エネルギー水循環実験研究計画(GEWEX)の下で推進するアジアモンスーン域の大陸スケール実験(MAHASRI)とアジアモンスーン年(AMY)に関するワークショップが、一連の会議とあわせて開催の予定です。
 皆様のご参加とご協力をお願いいたします。